器についての基礎知識

器についての基礎知識

せっ器で有名な備前焼の湯飲みせっ器で有名な備前焼の湯飲み

器は和雑貨を愛する人にとって、欠かせないアイテムだと思います。日々の食卓を彩る代表的なアイテムでありながら値段的にも手ごろなので、真っ先に購入を検討する日用品の1つだと思います。
特に、茶わんやはし置きなど、日本の食卓でしか使わないアイテムも多く、和雑貨のファンならずとも食器棚の中にはこだわりの和食器が入っているはずです。
しかし、日常的に接している器でありながら意外にもその基礎的な知識をご存じない日本人がたくさん居ます。そこで今回は、和の器の基本的な知識を確認したいと思います。

和の器は、大まかに5つに分類して理解する

和の器の名称や役割に関しては皆さん、ご存じだと思います。はし置きは説明されるまでもなく、はしを置くための雑貨ですし、お茶わんはお米を入れて食べるための器です。そういったレベルでの説明をし直す必要はありませんが、器の素材や焼き方に関しては知識の乏しい人も多いはずです。そこで今回は和の器を5つに分類しました。

以上の5つです。お皿、お茶わん、はし置き、お盆、湯飲みなどいろいろな器や食器が日本にもありますが、そのほとんどが以上の5つのスタイルに分類可能です。和の器を考える上では非常に重要な分類なので、詳しく見ていきましょう。

1:陶器

最もポピュラーな陶器。土の表面には釉薬(ゆうやく)最もポピュラーな陶器。土の表面には釉薬(ゆうやく)

陶器とは粘土を練って窯で(1100から1200℃)焼き上げた器を言います。代表的な陶器の産地は、

愛知県の瀬戸焼、常滑焼
京都府の清水焼
栃木県の益子焼

などが挙げられます。陶器は別名で「土もの」と呼ばれ、指で器を叩くと、低くくぐもった音が聞こえます。土の器の上に、釉薬(ゆうやく)というガラス質の液体をコーティングするため、器としても利用が可能になりますし、見た目の印象もかなり変わります。

2:磁器

光沢ある肌が磁器の特徴。鉄分の違いで青磁と白磁に分かれる光沢ある肌が磁器の特徴。鉄分の違いで青磁と白磁に分かれる

青磁と白磁をまとめて磁器と言います。陶器と異なり、土ではなくて陶石と呼ばれる石を砕いて、その粉に粘土や石炭を混ぜて作ります。陶器が粘土でできているのに対し、磁器は石の粉末でできているので「石もの」と呼ばれています。叩くと「キーン」という金属音に近い響きを聞かせてくれます。代表的な産地は、

佐賀県の有田焼
石川県の九谷焼

になります。有田焼も九谷焼も美しい模様が特徴ですが、その理由は器そのものにあります。磁器は1300℃の高温で焼くため表面がガラス質のように焼き固まります。その表面から絵付けをするので、美しい模様を描けるのです。

3:せっ器

通常、陶器は土を練って成形し、素焼きしてから釉薬というガラス質の液体でコーティングをして再度焼き直すのですが、そのコーティングの行程を省き、1200℃の熱でじっくりと長時間焼くだけの器をせっ器と呼びます。代表的な産地は、

滋賀県の信楽(しがらき)焼
岡山県の備前焼

になります。長時間焼き続けると土が締まり、器として使えるようになります。表面には炎で焼けたような模様が自然と付くので、同じ焼き物はできあがりません。土を感じさせてくれる素朴でワイルドな器になっています。

4:ガラス器

ガラス器も立派な和雑貨の1つガラス器も立派な和雑貨の1つ

実は古くから日本に存在する素材で、古墳時代にも勾玉(まがたま)などに使われていました。2千年ほど前から成形や加工が行なわれてきた伝統の材料です。さらに中世になると、外国からガラスの製造技術が伝えられ、飛躍的に技術が進歩しました。

東京の江戸切子
鹿児島の薩摩切子

などは、今も残るガラス器の代表例になります。ちなみにガラスの器は誤解をしている方が多いですが、重ねて保存をしてはいけません。細かい傷がたくさんついてしまうので、柔らかいスポンジで優しく洗い、他の食器とぶつからないように保存してください。

5:漆器

漆器は縄文時代にまで歴史がさかのぼれる漆器は縄文時代にまで歴史がさかのぼれる

漆は縄文時代に接着剤として使われていた物質とされています。その後、飛鳥時代に木材の表面に塗りつけ、漆そのもので模様をつける技法が誕生し、平安時代以降さらに発展して現在の形になった文化です。代表的な産地は、

石川県の輪島漆

です。ちなみに保存方法ですが、急激な温度変化や湿度変化を嫌うので、食器洗浄器は避けてください。また、直射日光の届く場所も厳禁です。

器のメンテナンス方法を覚える

同じ陶器、同じ磁器でも模様などの違いは当然出てきますが、日本の代表的な模様に関してはまた別のページを割いて説明致します。
どれもメンテナンスは重要で、特に土の器に関しては、利用する前に米のとぎ汁や番茶を似て素材の気泡などを埋めてあげる必要があります。
また、直接重ねて収納するとどの器も傷付いていちじるしく美しさや機能が低下するので、重ねる場合でも器と器の間に柔らかい紙や布を挟んでください。